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地球の大きさを概算

エラトステネス(Eratosthenes, 276BC - 194BC)の本"On Measurement of the Earth"

"A manual of Greek Mathematics" [3]によれば、同時代の人は こう書き残している。
"キュレネのエラトステネス(Eratosthenes) は全ての学問の分野で秀でた偉大な人...
そこでひとは 彼のことを"何でも屋さん"と呼んだ。...エラトステネスの最も有名な功績は地球の大きさの測定であった。"

(筆者注記)"何でも屋さん" という称号は 純粋な学者ではないという意味で 当時としては 褒めことばではない。
むしろたいした学者ではないというような含みがある。

基本的な仮定

彼は本の中で次の仮定をした。
  1. 地球は球形である。
  2. 太陽と地球の間の距離は 地球の大きさと比べて はるかに大きいので、そこからくる光線は平行であるとみなせる。
  3. シエネ(Syene) と アレキサンドリア(Alexandria of Egypt) は同じ子午線上に位置する。
  4. シエネ(Syene) と アレキサンドリア(Alexandria of Egypt) の間の距離は---5,000 スタード(stades)である。
  5. 夏至の日の正午の太陽はシエネ(Syene)の真上である。
  6. その日の同時刻でアレキサンドリア(Alexandria of Egypt)では垂直に立てた棒に対する太陽光線の傾きは、円の50分の1 (= 7.2 度)である。
次の図は上記の仮定とその結果を示す。


**************** Eratosthenes_base_model.dwg ****************

結果の精度についての検討

エラトステネス(Eratosthenes)が取ったアプローチには全く欠点は無いが、測定結果の精度は長さの単位の変換精度に依存する、
即ち ステード"stades"をどう現代の単位(キロメートルやマイル)に変換するかに全てが掛かってくる。
彼の結果(250,000 stades)を40 stades = 6.3km (3.915 mile)で換算すると、
地球の子午線沿いの円周 = (250,000 / 40) x 3.915 = 24,665 マイル で、直径は7789 マイルとなる。
これは実際の極直径にわずか85 マイル短いだけの値である。誤差はわずか1%!!

しかし彼の結果は後に252,000 stadesに変更された、というのはおそらくこの数字が60で割り切れて計算し易かっただったからであろう。
(当時の計算は60進法だった。) 252,000 stadesでは極直径は7850 マイルで、より正確な近似値となる。
これはわずか24マイル短い0.3%の誤差である!!!

(筆者注記): stades は stadium と同じく 古代ギリシャの長さの単位である。 1 stadium = 185 m (606 ft 9 inches)
現代使われている スタジアム(stadium) ということばは 古代ギリシャの競走するグラウンド の長さが
 1 stadium であったことに由来する。

参考まで; 地球の半径 (最小 6336 km(3937 mile) 最大 6399 km(3976 mile)) 
  地球は完全は球形ではない、偏楕円体(若干卵型)で、その円周距離は赤道方向周りが 南北周りよりも長い。
これは 地球の自転の影響である。

地球の円周距離については次のサイトを参照するとよい。

Reference web site: Bob Chamberlain : "What are some algorithms for calculating the distance between 2 points ?"

AutoCADでのモデルのシミュレーション

ウェブサイト  緯度と経度(Latitude and Longitude)  によれば、 エジプトの2箇所の緯度と経度の値は

緯度 経度
アレキサンドリア,エジプト(Alexandria, Egypt) 31.2 N 29.9 E
シエネ(アスワン),エジプト(Aswan, Egypt) 24.088 N 32.899 E

シエネ(アスワン)における経度はアレキサンドリアよりも若干異なる。(違いは約3度)1度がおよそ69マイルに相当するので、
シエネは今日のアスワンの約200マイル西方に位置しなければならない。
我々のモデルでのシエネの経度は29.4 E と仮定し、それゆえアレキサンドリアとシエネが同じ子午線上に位置する。
アレキサンドリアにて夏至の傾斜角を測る日時計を建てる。ポールの高さは3メートルでその半径を10 cm(0.1 m)とする。
シエネでは太陽が北回帰線にある時、井戸の底に影を落さないことを示すために井戸を掘る。
井戸の寸法は地面から5メートルの深さで、内径が1メートル、そして井戸の底に水を入れる。
これがそのモデルである。


*************************************** Eratosthenes_model_2.dwg ***************************************

この図面の作成方法:
   プログラム Eratosthenes_model2.lsp を   (load "Eratosthenes_model2") でロードする。
  コマンド ラインから measure_earth  と実行命令をタイプする。
筆者の注記: オリジナルのモデルを作成した時、日時計のポールの大きさは高さが3メートルで直径を0.2メートルと設定した。
しかし(地球の直径と比較し)この尺度では影を作るレンダリングがうまく動作しなかった。そのため ポールと井戸の尺度を3桁上げることにした。
おそらくレンダリングする前に地球を消せば、オリジナルの尺度でも良かったのだろうが、筆者はそれを確認していない。
従って、ここでは見るだけの目的で日時計と井戸を地球とは別にして処理している。

CADで行うエラトステネスのモデル描画

次の4つの異なる光の方向が選択される。角度は赤道平面に対する傾きである:
季節 角度 COS SIN
夏至 23.5 0.91706 0.39875
角度 12 度 12.0 0.97815 0.20791
春分および秋分 0.00 1.00000 0.00000
冬至 -23.5 0.91706 -0.39875

注記:

AutoCADでの遠い光の定義は小数点2桁しか取れない。故にCos(余弦)の値 0.917 と 0.924 はどちらも 0.92 となる。
アレキサンドリアの日時計

日時計のポールは影を落とし、夏至には影の先端とポールの先端とポールを結ぶ線は 7.2 度である、
この角度はその地点の緯度(latitude angle) である。その想像上の線も参照を目的にレンダリング図に追加する。






**** earthsize_win_id.dwg ****
********************** sundial_at_Alexandria.dwg **********************
アニメーションを準備する。

この図面の作成方法:
   プログラム Eratosthenes_model2.lsp を   (load "Eratosthenes_model2") でロードする。
  コマンド ラインから measure_earth  と実行命令をタイプする。
この時点でAutoCADが Eratosthenes_model_2.dwgを表示する。
レンダリングのイメージを得るには、次のステップが必要となる。
これらのステップはAutoCAD特有のものである。
(1) 左上のビューポートを選択し、VPORTS コマンドを用いてビューポートを一つ作る。 地球を表す青線を消す。
(2) 3DORBITS コマンドで、上の図面に示すように日時計を回転させる。
(3) VPORTS コマンドで、ビューポートを4つに分割する。
(4) それぞれのビューポートに、遠くからの太陽光の方向を指定する。
ここでは SHADOWS ON と Volumetric/Raytraced shadows オプションを選択することが重要。
(5) RENDER コマンドで図をレンダリングする。

シエネの井戸

視点は井戸の中心線から井戸を見下ろしている。水色は井戸の底にためた水を示す。 夏至には井戸水に影がない。






**** earthsize_win_id.dwg ****
**************************** well_at_Syene.dwg ****************************
アニメーションを準備する。

この図面の作成方法:
   プログラム Eratosthenes_model2.lsp を   (load "Eratosthenes_model2") でロードする。
  コマンド ラインから measure_earth  と実行命令をタイプする。
この時点でAutoCADが Eratosthenes_model_2.dwgを表示する。
レンダリングのイメージを得るには、次のステップが必要となる。
これらのステップはAutoCAD特有のものである。
(1) 左下のビューポートを選択し、VPORTS コマンドを用いてビューポートを一つ作る。 地球を表す青線を消す。
(2) VPOINT コマンドで、!pnt_syen と入力し視点の方向を指定する。
(3) VPORTS コマンドで、ビューポートを4つに分割する。
(4) それぞれのビューポートに、遠くからの太陽光の方向を指定する。
ここでは SHADOWS ON と Volumetric/Raytraced shadows オプションを選択することが重要。
(5) RENDER コマンドで図をレンダリングする。

参考文献

  1. Atlas of the SKIES, Surrey,England: TAJ Books,2003

  2. Heath, Sir L.H.: A History of Greek Mathematics,Vol II. Dover Edition, 1981. Originally published in 1921

  3. Heath, Sir L.H.: A manual of Greek Mathematics. Dover Edition ,1963. Originally published in 1931.

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質問、問い合わせは 筆者 岩本 卓也 宛てにお願いします。

Last Updated July 9-th, 2006

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