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エンパイア・ステート・ビルのてっぺんから何処まで遠く見えるか?

[1]によると:
"エンパイア・ステート・ビルは、ニューヨーク市マンハッタンの五番街33番通りと34番通りの間に位置する。
このビルはシュリーブ・ラム&ハーモンの会社によりデザインされ1930年に建てられた。
102階(高さ 1,250 ft/381m)を有するこのビルは長年の間世界一高いビルだった。その後世界貿易センター(World Trade Center)が建設されて、
ニューヨーク市でそして世界で一番高い超高層ビルとしての君臨は終わった。しかし、2001年のテロで世界貿易センターが破壊されたことにより
再び名声を回復した。エンパイア・ステート・ビルはオフィスビルとして現在25,000のテナントを有する。きれいに晴れた日には一番上の展望台から
周囲200マイル(320 km)近い範囲が一望に見渡せる。"

ここで疑問である- "周囲200マイル(320 km)近い" というこの数字はどの位正確なのだろうか?
このエンパイア・ステート・ビルの展望台から視界範囲を示す円を描くとすると、ニューヨーク市を中心とする円の半径は約32マイル(51 km)
ということを意味する。(式は : 半径 = 周囲/(2 * 3.1416) )
この記事からは、どうやってこの数字が得られたかは判らないので、我々で答えを出してみる。

数学的背景

答えを求めるには、ユークリッドの"原論" Book IIIにある定理36 で知られる次の定理を用いる。

下図において、点F は円の中心、線分AC は円の直径、点D はAC の延長線上の点、線分DB は点D から引いてB で接する線。
すると、次の関係が成り立つ。

DB x DB = DC x DA


**********prop_36.dwg**********

この定理をこの問題に応用する。
AC = 2R : 地球の直径( 6378 km または 3964 マイル)
DC = h : 地面からの展望台の高さ(381 m または 0.381 km または 1250 ft)
DB = L : 一番遠くに見える水平線までの距離
そこで、 L2 = h (h + 2R) ----> L = e(h (h + 2R)) --------------------(1)
これを書き換えるて L = e(2hR (1 + h/2R)) -------------------(2)
式(2)の R と h に実際の数値を代入するとその結果は
L = e(2*0.381*6378(1 + 0.00005974)) = 69.715 km -------------------(3)
(2) と (3)を見ると、(h/2R)の値は1.0と比較しても無視できる位に小さい。
よって、距離L は次のように書き換えられる  L = e(2hR) -----------------(4)
距離(L)は(マイル/キロメートル)で、高さは(フィート/メートル)で表すと便利である。
そして正しい近似を求めるために次の式を用いる。
メートル法--- L = e(2Rh/1000) = e(12.756h) = 3.572*e(h) ----(5)
フィート/ポンド法--- L = e(2Rh/5280) = e(1.5015h) = 1.225*e(h) ----(6)
ここで示す例では、式(5)が L = 69.72 となり、これはかなり正確な近似であると言える。

結果を地図で示す

CADにはラスターイメージ読み込み機能があるので、インターネットのマップサイト で New York 近辺の地図をスクリーン キャプチャーする。 
 ファイル形式は BMP,GIF, JPG のどれでも よい。
CADのラスターイメージ読み込み機能を使ってニューヨーク近郊地図を表示し、エンパイア・ステート・ビルの展望台からどれくらい遠くまで
仮想上の水平線が見えるかを示すために、ニューヨーク市を中心とする半径50 km と100 km の二つの円を地図に描く。
この地図は100 km の尺度目盛りがあるので、この目盛りを二つの円の半径や直径の長さを決めるのに利用して、
描こうとする円の中心がニューヨーク市に来るように移動させる。


**********New_York_vicinity.dwg**********

次にCAD を使って 地球の上に 高さが 1250 ft の棒を立て その頂点から 地球に接線を引くことを考えてみよう。

CAD の操作

CADを使ってデータを得るためには、次のステップを必要とする。
(1)----地球の半径の円を描く。
(2)----縦方向に直径を繋いだ線を引き、その線を1キロメートル上へ延ばす。
(3)----ビューポートを3つに分割する。まず水平に2つ、そしてその下方のビューポートを更に左右2つに分割する。
(4)----ビルを示す線(赤線)を引く。
(5)----赤線の頂点から円(青線)に接線を引く。
(6)----List コマンドでステップ(5)の線の長さを求める。

結果はこのようになる。


*************************view_range.dwg*************************

この図面を半自動的に作成する方法:
  プログラム earth_model.lsp を  (load "earth_model") でロードする。
  コマンド ラインから    view_range と実行命令をタイプする。

ステップ(4)までは全てこのコマンドで実行できる。

3つのビューポートが表示されたら、線の頂点から円に接する線が引かれる。この操作を異なる高さで繰り返し行う場合は、
前に引いた接線を先に消して新たに(height_input) コマンドを実行すること。
式(2)を使って求める正確な"L"の値は、テキストウィンドウに表示される。
図面での高さ(h)と距離(L)の値は DIMENSION メニューを用いて表示される。

参考文献

  1. http://education.yahoo.com/reference/encyclopedia/entry?id=15459 ,a short description on the Empire State Building.

  2. Translated by Heath, Sir L.H.: Euclid's "ELEMENTS". Originally published in 1908

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