三乗総和

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m乗の総和 (m P 4 の場合)

1, 2, 3乗の総和のまとめ

ここでは、この章のまとめを行う。
	S1[N] = 1  + 2  + 3  + .... + N = (1/2)N(N+1)

	S2[N] = 12 + 22 + 32 + .... + N2 = (1/6)N(N+1)(2N+1)

	S3[N] = 13 + 23 + 33 + .... + N3 = (1/4){N(N+1)}2

Sk[N] (k P 4 の場合) については?

Sk[N] は簡単に多項式で表せる

Sk[N] = ak+1N(k+1) + akNk + ak-1N(k-1) + .. + a1N + a0 (1)
全ての係数 ak+1, ak, ak-1 ,..., a1, a0 が見つかれば、 あらゆる k の値に関し Sk[N] を定義できる。
S4[N] を導く。 定義から S4[k+1] = S4[k] + (k+1)4 (2) (1)により S4[N] = a5N5 + a4N4 + a3N3 + a2N2 + a1N + a0 (3) ここで S4[0] = 0 であるから a0 = 0 となる。 (1) を (2)に代入し、定数 a* を含む項を左にまとめると、次のような結果が得られる。 左側       : 右側 N4 : 5a5 = 1 N3 : 10a5 + 4a4 = 4 N2 : 10a5 + 6a4 + 3a3 = 6 N1 : 5a5 + 4a4 + 3a3 + 2a2 = 4 N0 : a5 + a4 + a3 + a2 + a1 = 1 最初のラインは a5 = 1/5、これを二番目のラインに代入すると a4 = 1/4、... 結果: a5 = 1/5 a4 = 1/2 a3 = 1/3 a2 = 0 a1 = -1/30 a0 = 0 故に: S4[N] = (1/5)N5 + (1/2)N4 + (1/3)N3 - (1/30)N1 = (1/30)N(N+1)(2N+1)(3N2 + 3N - 1)
1636年、簡単な帰納法がピエール・ド・フェルマ (Pierre de Fermat, 1601- 1665)によって導かれた。
最初のn三角錐数の式を用いると、例えば、
   i = 1 ~ n 
	ni(i + 1)(i + 2)/(1.2.3) = n(n + 1)(n + 2)(n + 3)/(1.2.3.4)		
彼は左側を次のように展開し、
 (1/6)ni3 + (1/2)ni2 + (1/3)ni   
そして低累乗総和(sums of lower power)に関する式 ni3 を得た。
高累乗(higher power)に関する式は
ni(i + 1)(i + 2)(i + 3)/(1.2.3.4) = n(n + 1)(n + 2)(n + 3)(n + 4)/(1.2.3.4.5)	
左側を展開して ni4 が得られる。
この方法は、一般的であるが高累乗に関しては取り扱いにくい。
その後1654年、パスカル(Blaise Pascal, 1623 - 1662) が、二項展開式を用いた改善方法を見つけ出した。 k = 4の場合のパスカルの方法を示す。
	(i + 1)5 - i5 =  o51pi4 + o52pi4 +o53pi2 +o54pi + 1

	これは i がいかなる値でも有効である。i = 1, 2, ..., n, を代入して全部加えると、結果は

	n[(i + 1)5 - i5] = 5ni4 + 10ni3 + 10ni2 +5ni1 + n1 
左側の項を約すと、最初と最後の項だけが残る。その結果は
	(n + 1)5 - (n + 1) = 5ni4 + 10ni3 + 10ni2 +5ni1 + n1 
ni3,ni3,ni3 は判っているので、
次の結果が得られる。
	ni4 = (1/5)n5 + (1/2)n4 + (1/3)n3 - (1/30)n
しかし、フェルマパスカル も一般式を見つけることはできなかった。
それを最初に導いたのは Johann Faulhaber(1580 - 1635) で、 彼の本 Academiae Algebrae(1631)に述べている。彼の一般式は
Sk-1[N] = 1k-1 + 2k-1 + 3k-1 + .... + Nk-1  
	= (1/k)[Nk + ok1pNk-1x(1/2)+ ok2pNk-2x(1/6) + ok3pNk-3x(0) + ok4pNk-4x(-1/30) + . . .] (4)

(okip は二項展開で用いる係数)、即ち:
	(x + y)p = nonppxp-nyn      (n = 0 ~ p)            				  (5)

定数項 (1/2), (1/6), 0 , (-1/30), ..., は不恰好だが、 こうしてFaulhaberによって一般式化されたことで、ついにこの問題は解決した。
しかし、天才ベルヌーイ(Jacob (Jacques) Bernoulli, 1654 - 1705) のようにクリーンではない。 天才の一打でベルヌーイは Faulhaber の式 (4)を、よりクリーンにしただけではなく、200年以上たった今でも、多くの人がこのりっぱなアイデアをどのように導き出したのか不思議に思う程に、最終式を簡潔な形で表し簡素化した。 死後に出版された傑作、推測法(Ars Conjectandi(1713))で、彼の論証は、パスカルの三角形("Pascal's" Tirangle)を特殊な方法に並べることから始まる。

	Pascal's Triangle     left adjusted

		Column #
		1   2   3   4   5   6   7   8   9  10  11  12
	-------------------------------------------------------
    Row #

	1	1   0   0   0   0   0   0   0   0   0   0   0

	2	1   1   0   0   0   0   0   0   0   0   0   0

	3	1   2   1   0   0   0   0   0   0   0   0   0

	4	1   3   3   1   0   0   0   0   0   0   0   0

	5	1   4   6   4   1   0   0   0   0   0   0   0

	6	1   5  10  10   5   1   0   0   0   0   0   0

	7	1   6  15  20  15   6   1   0   0   0   0   0

	8	1   7  21  35  35  21   7   1   0   0   0   0

	9	1   8  28  56  70  56  28   8   1   0   0   0

      10	1   9  36  84 126 126  84  36   9   1   0   0 	

      11	1  10  45 120 210 252 210 120  45  10   1   0

      12	1  11  55 165 330 462 462 330 165  55  11   1


2列目を0から始めて下方向に見ていく。
例えば、4行目までの値を加え、その和を項数(=4)に最後の値(=3)を掛けたもので割ると、(0 + 1 + 2 + 3)/(4 x 3) = 1/2が求まる。
もう一つ行くと、(0+ 1 + 2 + 3 + 4)/(5 x 4) = 1/2 が再度求まる。
これはどの行数にも当てはまり、仮に同じ操作をn行目まで行ったとしても結果は同じになる。
	[0 + 1 + 2 + 3 + ... + (n-1)]/[n x (n-1)] = S1[n-1]/[n(n-1)] = 1/2
よって
	
	S1[n-1] = (1/2)[n(n-1)]
n-1 を nで置き換えると,
	S1[n] = (1/2)n(n+1)
(これはすでに述べた自然数の和である。)

ここで3列目を見てみる。4行目までの結果は(0 + 0 + 1 + 3 )/(4 x 3) = 1/3 になる。
5行目の結果も(0 + 0 + 1 + 3 + 6)/(5 x 6) = 1/3 となる。
この操作をn行目まで行うものとすれば	(n行目までの和)/(n x n行目の値) = 1/3 が求まる。

3列目におけるn行目の値は(n-1)(n-2)/(1x2)で表され、n行目までの和は

	n{(1/2)(n-1)(n-2)} = (1/2)nn2 -(3/2)nn1 + n(1)
 			= (1/6)n(n-1)(n-2)= (1/6)(n3 - 3n2 + 2n)

故に (1/2)nn2 = (1/6)(n3 - 3n2 + 2n) + (3/2)nn1 - n(1)

但し、 	(3/2)nn1 = (3/2)(1/2)n(n+1) = (3/4)n(n+1) で n(1) = n

代入すると
		(1/2)nn2 =(1/6)n3 + (1/4)n2 + (1/12)n
従って、 S2[n] = nn2 = (1/3)n3 + (1/2)n2 + (1/6)n

同様に4列目についても
	nn(n-1)(n-2)(n-3)/(1x2x3) = (1/6)nn3 - nn2 + (11/6)nn - n1  = n(n-1)(n-2)(n-3)/(1x2x3x4)

の関係が成り立つので
  nn2 = (1/3)n3 + (1/2)n2 + (1/6)n,
	nn1 = (1/2)n(n+1),  n(1) = n
を用いて

 (1/6)nn3 = (n4 - 6n3 + 11n2 - 6n)/24 + (1/3)n2 + (1/2)n2 - (11/12)n2 - (11/12)n + n
						= (1/24)n4 + (1/12)n3 + (1/24)n2
または    S3[n] = nn3 = (1/4)n4 + (1/2)n3 + (1/4)n2
が求まる。

このように一つずつ行い、次のように高累乗が容易に求められる:
			
				Sum of Powers

	nn1 = (1/2)n2   +  (1/2)n1
	nn2 = (1/3)n3   +  (1/2)n2  + (1/6)n
	nn3 = (1/4)n4   +  (1/2)n3  + (1/4)n2
	nn4 = (1/5)n5   +  (1/2)n4  + (1/3)n3 -  (1/30)n1
	nn5 = (1/6)n6   +  (1/2)n5 + (5/12)n4 -  (1/12)n2
	nn6 = (1/7)n7   +  (1/2)n6 +  (1/2)n5  -  (1/6)n3 + (1/42)n1
	nn7 = (1/8)n8   +  (1/2)n7 + (7/12)n6  - (7/24)n4 + (1/12)n2
	nn8 = (1/9)n9   +  (1/2)n8  + (2/3)n7  - (7/15)n5 +  (2/9)n3 - (1/30)n 
	nn9 = (1/10)n10  + (1/2)n9  + (3/4)n8  - (7/10)n6 +  (1/2)n4 -  (3/20)n2 
	nn10 = (1/11)n11 + (1/2)n10  + (5/6)n9   -   (1)n7   +  (1)n5  -  (1/2)n3 + (5/66)n 

ベルヌーイ(Bernoulli)は式を導いたが、彼の式は基本的にFaulhaberの結果と同じであったのでFaulhaberの功績として称えた。
しかし、式の定数については、ベルヌーイの本で広範囲に述べられていることから、ベルヌーイ数(Bernoulli numbers)
として知られている。この式は二項定理と関係があるようで、全ての定数は次のように書き替えられる。

B0=1, B1 = 1/2 , B2 = 1/6, B3 = B5 = B7 = ... = 0

B4= B8 = -1/30, B6 = 1/42, B10 = 5/66, ... 

あたかもこれらは、B の累乗であるかのようであるが、実際はそうではない。

更に、この式は次のように、より簡潔に書き替えることができる。

	Sk-1[N] = 1k-1 + 2k-1 + 3k-1 + .... + Nk-1 = (1/k)"{(n+B)k - Bk}"

 (括弧"{  }"内のBの累乗項はベルヌーイ数(Bernoulli numbers)として解釈する。)

これは非常に見栄えの良い式といえる!!

ベルヌーイは、彼の本の中で、最初の整数1000までの10乗の総和を、7分半で計算できると述べている。
もし彼に挑戦したい方は、次の式を使ってトライしてみて下さい!

(1/11){(x+B)11 - B11} = (1/11)(x11+11B1x10+55B2x9+330B4x7+462B6x5+165B8x3+11B10x)

	尚、 x = 1000,
		B1 = 1/2,  B2 =  1/6, B4  = -1/30,
		B6 = 1/42, B8 = -1/30,B10 =  5/66,

参考文献

  1. Conway,J.H., Guy,R.K.: The Book of Numbers. Springer-Verlag,New York, p.106-109, 1995.

  2. Smith, David Eugene : A Source Book in Mathematics. On the "Bernoulli Numbers". Dover, 1959. Original in 1929.

  3. Young, Robert M. : Excursions in Calculus. Mathematical Association of America, 1992.

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質問、問い合わせは 筆者 岩本 卓也 宛てにお願いします。

Last Updated July 9-th, 2006

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