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挿入法による古典的な解 (Neusis or Verging)

1. アルキメデスの挿入法(#1)

アルキメデスの方法を下図に示す。

証明:   AC と OB は平行であるから
    ∠ADO = ∠DOB
三角形 AOE と AED は二等辺三角形であるから
    ∠ADE = ∠EAD
また ∠AOE = ∠AEO = 2 ∠ADE = 2 ∠DOB
従って ∠DOB = (1/3)∠AOB

************************* trisect_Archimedes_1.dwg *****************

ここをクリックしてアニメーションを見る。

この図面とアニメーションの作成方法:
  プログラム neusis.lsp を   (load "neusis") でロードする。
  次にコマンド ラインから neusis_1 と実行命令をタイプする

挿入法(#1)の代数方程式

点A(a,b) を中心とする円の方程式:
	(x-a)2 + (y-b)2 = a2 + b2
直線 AC :  y = b
直線 OD :  y = tanα x = mx
直線 OD が 円、直線 AC と交わる点を E(x1,y1), D(x2,y2) とすると
	(ED)2 = (1 + m2)(x1 - x2)2 = a2 + b2
∠AOB = π/3 , AO = 1 とすると a = 1/2, b = √3/2 となり
m についての4次方程式がえられる。
	f(m) = m4 - 4√3 m3 + 6m2 + 4√3 m - 3 = 0
この図面の作成方法:
  プログラム quartic_eqn.lsp を   (load "quartic_eqn") でロードする。
  次にコマンド ラインから neusis_1_model と実行命令をタイプする

*********************** neusis_model_1.dwg **********************
この4次方程式 F(m)=0 の根を見つけるために 先ず m = -2 から 6についてグラフにする。
Y軸の値は 25分の1 に縮小している。

この方程式を 解くと次の4個の解が得られる。 値の小さいほうから
		tan α			α( ° )
   m1 = -0.83909963117728	-40.0000000000°
   m2 =  0.36397023426620	 20.0000000000°
   m3 =  1.73205080756888	 60.0000000000°
   m4 =  5.67128181961771	 80.0000000000°
	
この図面の作成方法:
  プログラム quartic_eqn.lsp を   (load "quartic_eqn") でロードする。
  次にコマンド ラインから neusis_1_equation と実行命令をタイプする

****************** neusis_model_1_equation.dwg *****************
この4次方程式 F(m)=0 の根を見つけるには ここでは Newton-Raphson 法を使った。
筆者は エクセル をつかって m2 を次のように計算した。
わずか4 回 の繰り返し計算で 少数以下 12桁まで正しく求められる。


********************************* neusis_1_equation_1.xls ********************************
この4次方程式 F(m)=0 の根 m1, m2, m3, m4 を 使って 直線を引いてみよう。
見やすくするため、 m1(赤) , m2(黄色), m3(緑) ,m4(シアン) と色分けをしている。。

これを見てすぐに気がつくと思うが m3(緑)の根は 無意味な解である。
m3 の値そのものを見てみると これは √3 の値で tan(π/3)に等しい。
従ってこの4次方程式は (m - √3)の因子を含んでいるので
次のようになる。
(m - √3)(m3 - 3√3m2 - 3m + √3 ) = 0
これから 	m3 - 3√3m2 - 3m + √3 = 0
この式は tan 関数の 3倍角公式から導かれるものであることを示そう。
この図面の作成方法:
neusis_model_1.dwg の図面をベースにしてm1~m4 の解の直線を引く。

*************** neusis_1_equation_all_solution.dwg **************
sin と cos の角度の和の公式は
	sin(α + β) = sinαcosβ + cosαsinβ
	cos(α + β) = cosαcosβ + sinαsinβ
これを使うと
	tan(α + β) = sin(α + β)/cos(α + β) = (tanα + tanβ)/(1 - tanα tanβ)
従って    tan2α = 2tanα/(1-tan2α)
そして    tan3α = (tanα + tan2α)/(1 - tanα tan2α) = (3 tanα - tan3α)/(1 - 3tan2α)
これを展開してまとめると 最終的に 次のようになる。
	(tanα)3 - 3(tanα)2tan3α - 3(tanα) + tan3α = 0
m = tanα と置くと
	m3 - 3(tan3α)m2 - 3m + (tan3α) = 0
三等分しようとする 角度が 60° の場合は tan3α = √3 であるから 三次方程式は次のようになる。
	F(m) = m3 - 3(√3)m2 - 3m + √3 = 0
これは 上述の挿入法で導かれた 多項式と同じものである。
	
参考のため F(m) のグラフを下に示す。

Y軸の値は 10分の1 に縮小している。

この方程式を 解くと次の3個の解が得られる。
値の小さいほうから
		tan α			α( ° )
   m1 = -0.83909963117728	-40.0000000000°
   m2 =  0.36397023426620	 20.0000000000°
   m3 =  5.67128181961771	 80.0000000000°
	
この図面の作成方法:
  プログラム quartic_eqn.lsp を   (load "quartic_eqn") でロードする。
  次にコマンド ラインから neusis_1_equation_cubic と実行命令をタイプする

*************** neusis_1_equation_cubic.dwg **************

三個の解についての説明

例として 取り上げた 角度が 60度 であるから その三等分の解が 20度 であるというのは 理解できる。
しかし あと二個の角度 (-40度 と 80度 )については 少し説明を要する。
三角関数の値、例えば tanθ は θ に 2π, 4π を加えた角度 2π + θ, 4π + θ
においても同じ値を持つ。 だから 60度の三等分は同時に (360 + 60)度 , (720 + 60)度の三等分を意味する。
従って 140度 , 260度 も解になる。
m1 = -40 度 は 140 = 180 - 40; m3 = 80 度 は 360 - 80 = 260 に相当する。

2. パップス(Pappus)の挿入法

パップスの方法を下図に示す。

三等分の証明 :
∠EAD は 90 ° であるから、
3 点 A、D、 E は直径が ED の円上にある。
EDの中点を M とするとM が その円の中心点である。
従って AM = (1/2)ED = AO = EM = MD
だから ΔAOM と ΔMDA は、どちらも二等辺三角形である。
見方を変えると 
Aを中心に 半径 AO の円と直線 ODの交点がM である。
これは アルキメデスの挿入方(#1) と同じ結果になる。
従って 直線 OD は ∠AOB の三等分線である。
		

************************* trisect_Pappus_1.dwg*******************

ここをクリックしてアニメーションを見る。

この図面とアニメーションの作成方法:
  プログラム neusis.lsp を   (load "neusis") でロードする。
  次にコマンド ラインから neusis_2 と実行命令をタイプする

パップス(Pappus)の挿入法の代数方程式

直線 AF :  x = a ; 直線 AC :  y = b
直線 OD :  y = tanα x = mx
直線 OD が 直線 AF ,ACと交わる点を E(x1,y1), D(x2,y2) とすると
(ED)2 = (x1 - x2)2 + (y1 - y2)2 = 4(a2 + b2)
x1 = a, y1 = ma; x2 = b/m, y2 = b
であるから
(a - b/m)2 + (ma - b)2 = 4(a2 + b2)
ここで (b/a) = tan(3θ) と置き換え 、上の式を整理すると
F(m) = (m + tan3θ)(m3 - 3tan3θ m2 - 3m + tan3θ ) = 0
となり、 m についての4次方程式がえられるが (m + tan3θ) = 0
が 解でないことは 明白であるから 、三等分の方程式は 
f(m) = m3 - 3tan3θ m2 - 3m + tan3θ  = 0
であたえられる。 
******************* neusis_model_2.dwg ******************
3θ = π/3 のとき この式は m3 - 3√3 m2 - 3m + √3  = 0
となる。 これは アルキメデスの挿入方(#1) の場合と全く同じものである。
この4次方程式 F(m)=0 の根を見つけるために 先ず m = -2 から 6についてグラフにする。
Y軸の値は 25分の1 に縮小している。

この方程式を 解くと次の4個の解が得られる。 値の小さいほうから
		tan α			α( ° )
   m1 = -1.73205080756888	-60.0000000000°
   m2 = -0.83909963117728	-40.0000000000°
   m3 =  0.36397023426620	 20.0000000000°
   m4 =  5.67128181961771	 80.0000000000°
	
この図面の作成方法:
  プログラム quartic_eqn.lsp を   (load "quartic_eqn") でロードする。
  次にコマンド ラインから neusis_2_equation と実行命令をタイプする

****************** neusis_model_2_equation.dwg *****************

この4次方程式 F(m) = 0 の根 m1, m2, m3, m4
を 使って 直線 y = mx を引いてみよう。
見やすくするため、m1(赤),m2(黄),m3(緑),m4(シアン)
と色分けをしている。
4次方程式であるから 
4個の根が あるのは 予想できる。
求める解は m3 (20°) であり m2, m4 も 解の一部であることは
すでに 上述した通りである。
しかし m1 (- 60 °) の持つ意味が これだけの情報では理解できない。
そのためには パップスが考え出した 
挿入点 ED を見付ける一般的な手法を説明する必要がある。
それには、下記の
パップス(Pappus)による挿入法 の一般解法 を参照されたい。
*************** neusis_2_equation_all_solution.dwg **************
三次方程式は アルキメデスの挿入方の場合と同じであるが	
参考のため F(m) のグラフを下に示す。

Y軸の値は 10分の1 に縮小している。

この方程式を 解くと次の3個の解が得られる。
値の小さいほうから
		tan α			α( ° )
   m1 = -0.83909963117728	-40.0000000000°
   m2 =  0.36397023426620	 20.0000000000°
   m3 =  5.67128181961771	 80.0000000000°
	

*************** neusis_1_equation_cubic.dwg **************

パップス(Pappus)による挿入法 の一般解法

パップスは二つの直線にまたがって、与えられた長さの線分を挿入する一般的な手法を考えだした。
それは ユークリッド の 幾何原論 の 第一巻にある定理 43 と 彼の時代に既に良く知られていた
円錐曲線の一つである 双曲線を使ったものである。 以下にそれを簡単に説明する。
  挿入法の問題は次のように表される。
ABCD は平行四辺形である。 A を通る直線が CD と BC の延長と交わる点を  E,F
とするとき EF があたえられた長さになるようにする。
定理 43 を簡単に言うと "BIEC とEDHJ の面積は等しい。"
ABCD = IBCE + AIED , AIJH = DEJH + AIED
であり、 AIED は共有されているから
ABCD = AIJH
従って  BC x CD = BF x ED
FH 上に点G を取り 平行四辺形 EDGF を作る。
ED = FG であるから BF x ED = BF x FG
故に BC x CD = ab = BF x FG = 一定値

点G は BCを x 軸、 BAを y 軸としたとき,
xy=ab なる双曲線 と 点D を中心として
与えられた長さを半径とする円弧の交点である。


*************** verging_generalized.dwg **************
この図面の作成方法:
  プログラム quartic_eqn.lsp を   (load "quartic_eqn") でロードする。
  次にコマンド ラインから draw_hyperbola と実行命令をタイプする

例 :   60° の場合

三等分する角度 ∠CAD = 60 ° であるから
AD = BC =1, AB = CD = √3 , AC=2.0 である。
xy = ab = √3 の双曲線を 緑色で示す。
点D を中心として半径 4.0 の円との交点を G とする。

G から BCに垂線を下ろした点 が F である。
AF が ∠CAD の三等分線である。
この図面の作成方法:
  プログラム quartic_eqn.lsp を   (load "quartic_eqn") でロードする。
  次にコマンド ラインから pappus_example と実行命令をタイプする
結果の図面を 一部だけ取り出す。
*************** 60_deg_case_solution.dwg **************

   60° の場合ー総ての解

左図に示すように 双曲線と円の交点は 4個あることがわかる。
それは挿入法の解が 4次方程式の根であることからも推測できる。
   その 4個の解は 
	  m1 = -60°
	  m2 = 140° = (360/3)° + 20°
	  m3 =  20°
	  m4 = 260° = (720/3)° + 20°
   である。
 m1 は無意味な解であるので m2, m3, m4 が三個の解である。
この図面の作成方法:
  プログラム quartic_eqn.lsp を   (load "quartic_eqn") でロードする。
  次にコマンド ラインから pappus_example と実行命令をタイプする
結果の図面を 修正を加える。
*************** 60_deg_case_all_solution.dwg **************

3. アルキメデスの挿入法(#2)

アルキメデスの方法を下図に示す。

アルキメデスの挿入法(#1) の 
上下を逆にすると このモデルになる。

従って 説明は上記を見てください。

このモデルは コサイン を未知数にした 
与えられた角度 が 3θ の 三等分方程式
    X3 - 3X - 2a = 0
ここで X = 2cosθ ;   a = cos3θ である。

につかわれている。
************************* trisect_Archimedes_2.dwg *******************

ここをクリックしてアニメーションを見る。

この図面とアニメーションの作成方法:
  プログラム neusis.lsp を   (load "neusis") でロードする。
  次にコマンド ラインから neusis_3 と実行命令をタイプする

参考文献

1. Yates,Robert Carl : "The Trisection Problem", NCTM, 1971.

2. Heath,Sir Thomas L. : "A History of Greek Mathematics", Vol. 1, Dover, 1981.


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質問、問い合わせは 筆者 岩本 卓也 宛てにお願いします。

Last Updated Nov 22, 2006

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