立方体の倍積問題
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その後の数学者

1. ニコメデス(Nicomedes) revisited

ニコメデス(Nicomedes)の解の核心は、線分CZ とCX が交差する点K をneusis process (verging)で求めることである。

二つの与えられた線分のデータは、BC とCF (= AD = HK)であることを意味する。

AM = FH であるから、引数に必要な全要素は、B,C,E,F,G,H,K,Zで作られる図形に含まれる。

点A,L,D,Mで結ばれた図形は余計に見える!!
********* Nicomedes_Delian_desc.dwg ********

その後の数学者達は(誰だか判らないが)これに気付き、ニコメデスのデリアンモデルを次のように修正した:
線分FB を引く。BV = BF (= CF = AD)となるように、その線分を点V へ伸ばす。
V と Cを結ぶ。
すると点V,C,H,Z は線分VZ上になる。
何故?-- ∠FCV は90度であることを示す。
ニコメデスのモデルの下の部分だけを取り出すと、次の図のようになる。


**************************** Nicomedes_modified.dwg **************************

線分FG は、線分CH が線分VZ によって引かれるため、もう必要ない。
線分GF と点G を消去し、軸BC に関する全体図の鏡象を作ると、モデルは下の図のようになる。


*************************** Nicomedes_modified_a.dwg ************************

長さBC の定義で若干違う2つのモデルが Ref. 1 と 2 に示されている。

それらをここで選んだ理由は、両方とも大変おもしろい証明であるからである。

一般的な例 (Ref.2)

参照し易いように点の名前は(Ref.2)のものと一致するように変更する。
図中で、長さ AB = (k / 4) 、  但し 0 < k < 8
線分CE は BA と平行に引く。
これの目的は、RS = 1 であるような点S を求めることである。
よって、 x = (k)1/3


*************************** Nicomedes_modified_b.dwg ************************
証明のまとめ (Ref.2)

 
 B はCD の中点で AB は CE に平行であることから、CE = 2 AB = k / 2 
 また、三角形 ECR と ASR は相似であるから、(k/2) / CR = AS / 1 が得られる。
 AS = x であれば、CR = k/(2x) 					(1) 
 ピタゴラスの定理を二度使って
 	CS2 = [1 + k /(2x)]2 = CM2 + MS2 = [CB2 - BM2] + MS2
			    = [12 - (k/8)2] + [x + (k/8)]2
 乗数順に x 項を並べ替えると、結果は次のような四次方程式となる。
 	4x4 + kx3 - kx - k2 = 0
 この方程式は次のように因数分解できる:
	(4x + k)(x3 - k) =  0

	(4x + k) >  0 であるから、 x3 - k = 0 

 従って、  x = (k)1/3 					(2)
 (2) を (1) に代入し
	y = CR = (1/2)k2/3				(3)
 ABC が正三角形である時 k = 4 
 そこで (2) と (3) から、 BS( x ) と CR ( y ) は
		x = BS = (2)2/3
		y = CR = (2)1/3
 となる。
 この k = 4 の場合が、次のモデル(ref. 1)になる。 

正三角形の場合 (Ref.1)

これはABC が正三角形の場合の例である。
次の図面では、AB = BC = CA = k
方法としては QP = k とする線分CP を引く。
よって、 CQ = k (2)1/3 で BP = y = k (2)2/3


* ************************** Nicomedes_modified_c.dwg ************************

このRef.1 では、前述の一般的な場合の証明ではなくて、非常におもしろい証明を行う。

二つの有名な幾何学定理を用いる。一つはメネラウスの定理、もう一つはユークリッドの本(Book III)の中から定理36。
後者(もしかして前者???)はRef.1の中で"the leg transversal theorem"と呼ばれる。
それらを次の図に示す。


*********** Menelaus_theorem.dwg *********** ********** transversal_theorem.dwg **********

Ref.1 での証明。

 
 準備:
   2k とk の間の二つの比例中項を求める方程式は
	2k/y = y/x = x/k
   であるから、三つの曲線がある。
	放物線-1	y2 = 2kx					(i)
	放物線-2	x2 = ky					(ii)
	双曲線	xy = 2k2					(iii)

   (1)(もしかして(i)???)と (ii) をまとめると、円の方程式ができる。
	円		x2 + y2 -2kx -ky = 0		(iv)

   (i) と (iv)の交点はデリアンの解を持つ。
   次の証明ではこのアイデアを用いる。
	
 (I)  メネラウスの定理を線分DBQ が横断する三角形ABC に適用すると
 	AD.CQ.BP = PQ.AB.CD または
		xy = 2k2							 (1)
 (II) 定理36 図では
	DF.DG = DC.DA = (DE - CE)(DE + CE) = DE2 - CE2	        	 (2)
      ここで、点C を中心とし半径k の円を考える。
	(2) は次のように表される
		PB.PA = PC2 - k2 または
		y (y + k) = (x + k)2 - k2 = x2 + 2kx 	  		 (3)

	
ここでの Ref.1 の証明は、(1)が双曲線を表し (3)は2つの放物線に等しい円方程式である、ということで留めておく。
故に(1) と (3)はデリアンの解である。

      さらに続けて解を求める。
	
      (1) を (3)に代入すると方程式は
		(2k + x)(x3 - 2k3) = 0
   (2k + x) >  0 であるから
		x3 - 2k3 = 0					 	 (4)
      従って、
		x = k (2)1/3			

ABC は、辺の長さが k の正三角形である。
CA を伸ばし、A から k の距離に点D を与える。
D から B を通って点E へ線を引く。
A から B を通って点F へ線を引く。
点C を通り Q で線分BE に交差し、更に PQ = k であり、P で線分AF に交差する線を引く。

それで、 CQ = k (2)1/3 

点P を求めるためには
距離が k である位置に二つの印をした定規、またはコンコイド(Conchoid)曲線(C が 棒"pole", BE が 目盛り"rule", k が 距離"distance")を用いる。
******** modified_Nicomedes_desc.dwg *******

詳細は ニコメデス(Nicomedes) - Revisited の章で説明。

参考文献

1. Dorrie,Heinrich: "100 Great Problems of Elementary Mathematics",English translation, Dover, 1965.Original published in German in 1932

2. Martin,George E.: "Geometric Constructions",Undergraduate Texts in Mathematics,Springer Verlag,1997.

3. Descartes,Rene: "The Geometry of Rene Descartes",original in French and Latin, English Translation, Dover, 1925.


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質問、問い合わせは 筆者 岩本 卓也宛てにお願いします。

Last Updated Nov 22, 2006

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