立方体の倍積問題
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ギリシャの数学者達による立方体の倍積

二つの比例中項のアイデア

キオスのヒポクラテス(Hippocrates of Chios, およそ 470 BC-410 BC) は立方体の倍積問題は二直線間での
連続比例(continued porportion)の中で二つの比例中項を求めるのに等しいことを発見した。
それは、もし a/x = x/y = y/b (a と b は与えられる)ならば、 (a/x)3 = a/b によって求められる、ということである。
仮に a = 1, b = 2 ならば、 x = (2)1/3 となる。 即ち 2 の立方根を作図によって見つけることになる。
彼のこの発見の後、デリアン問題は幾何学的に二つの比例中項を求める問題となる。

1. アルキタス(Archytas)- 3D 立体相接解

アルキタス( Archytas of Tarentum, およそ 428 BC-350 BC) は三つの回転面の交差を求める解を発見した。
使用する三つの回転面は
(1) 直円錐: x2 + y2 + z2 = (a/b)2x2
(2) 円柱:     x2 + y2 = a x
(3) 円環:     x2 + y2 + z2 = a {x2 + y2}1/2
但し AC = a および AB = b とする。
図から、AC/AP = AP/AM = AM/AB を求まる。
よって AC/AB = (AM/AB)3 で、AM が解である。

詳しくは アルキタス(Archytas)- 3D 立体相接解 の章で説明。


********* Archytas_Delian_model.dwg ********* ******** Archytas_Delian_result.dwg ********

2. エウドクソス(Eudoxus)の解

エウドクソス( Eudoxus of Cnidus, 408 BC - 355 BC) はアルキタス( Archytas)の生徒であった。彼は円錐と円環の相接を
xy平面上に射影することによって問題を解いた。その解は、曲線が円ABCと交差する点にある。

AB と AC は線分で、この線分間で二つの比例中項を見つける。

ステップ:
1. 線分ACに垂直な線BF を引く。
2. BF 上に任意の点G をとり、A を中心とし半径AG の弧を描き、
線分AC との交点を M とする。
3. 点M でAC に垂直な線を引く。この線は点L で線分AG に交差する。
4. 点L が円周上に来る時のAL が解である。

ここをクリックしてアニメーションを見る。
********** Eudoxus_Delian_desc.dwg *********

詳しくは エウドクソス(Eudoxus)のデリアン問題 の章で説明。

3. メナケムス(Menaechmus) - 円錐曲線解

メナケムス( Menaechmus, およそ 380 BC - 320 BC), は円錐曲線を発見した人であると言われ、アレクサンダー大王に
”幾何学に王道なし”と答えたことで有名。 彼はデリアン問題を解くのに放物線と直角双曲線を用いた。

 
        x, y を線分a, b 間の二つの比例中項が

	a / x = x / y = y / b

 であるとすると  x2 = ay,  y2 = bx
 および xy = ab である。 
 よって、これらの3曲線のいずれの組合わせでも
 デリアン問題の解を与える。

[アニメーションをここに追加]


******** Menaechmus_Delian_desc.dwg *******

詳細は メナケムス(Menaechmus)のデリアン問題 の章で説明。

4. プラトー(Plato)の立方体の倍化ツール

多くの歴史家は、この解がプラトー(Plato, 427 BC - 347 BC) によるものでないと認めている。
一般的な結論としては、この解は、プラトーの時代または メナケムス(Menaechmus)(およそ 380 BC - 320 BC) 以後に、
プラトーのアカデミー内部の誰かによって発明されたものだと考えられる。

この基本概念は、∠AMN と ∠MNB が90度の角度を保ちながら、
y軸とx軸上の点M とN を求めることである。

また、3つの三角形 AOM, MON, NOB は相似である。
よって、AO / OM = OM / ON = ON / BO 
および ON3 = AO.BO2
*********** Plato_Delian_desc.dwg ***********

詳細は プラトー(Plato)のデリアン問題 の章で説明。

5. エラトステネス(Eratosthenes)の立方根ツール

エラトステネス(Eratosthenes of Cyrene, 276 BC - 194 BC) は地球の大きさを概算したことでも有名。

ここをクリックしてアニメーションを見る。


******** Eratosthenes_Delian_desc.dwg *******

詳細は エラトステネス(Eratosthenes)のデリアン問題 の章で説明。

6. ニコメデス(Nicomedes)のコンコイド

ニコメデス(Nicomedes , およそ 280 BC - 210 BC) はコンコイド曲線(Conchoid curve)の発明者で、
自らの発明を使ってデリアン問題を解いた。
次に長さが等しいことを求める:   {AB.BC2}1/3  および    {AB2.BC}1/3

まず AB と BC の長さを与える。
D と E は AB とBC の二等分線。
CG = AB, CF = AD で、 CZ を GF に平行に引く。

   CF = HK であるような点K が求まれば

   AB / AM = AM / CK = CK / BC となり

  AM= {AB.BC2}1/3  および CK = {AB2.BC}1/3

そのためには コンコイドは F を "ポール" に、CZ を "定規" に、
距離をCF(= AD)に等しくなるように描く。

ここをクリックしてアニメーションを見る。
********* Nicomedes_Delian_desc.dwg ********

詳細は ニコメデス(Nicomedes)のデリアン問題 の章で説明。

7. フィロン(Philon)

フィロン(Philon of Byzantine , およそ 280 BC - 220 BC) はデリアン問題を次のようにして解いた:

AB と AC は二つの与えられた直線。
四角形ABDC を描く。
点E は 対角線AD と BCの交点。
直径BC の半円BDC を描く。
D から線を引く。 これがF とG でAB とAC に交差する。
また、この線は半円を H で切断する。
この線分を GH = DF となるように選択した時の
BF と CG が解である。
注記)精度表示板は |GH - DF| の値を表す。

ここをクリックしてアニメーションを見る。

このとき ∠AHG は 直角になることに注目されたい。
一般に ∠GAF が直角でなくても 与えられた点(この場合 D)
を通る直線に頂点 A からおろした垂線との交点を H とすれば 

HG = DF のときに 線分GF の長さが 最小になる。

この定理 は フィロンの定理(Philo's Theorem) と呼ばれている。 参考[7]


************ Philon_Delian_desc.dwg **********

詳細は フィロン(Philon)のデリアン問題 の章で説明。

8. アポロニウス(Apollonius)

アポロニウス(Apollonius of Perga , およそ 262 BC - 190 BC) の解はフィロンの解と非常に似ている。

直線AB と AC、半円BDC が与えられている。
E を中心とする円が F と G で AC と AB の延長線を切断。 
FD と DG を繋ぐ。

3点 F,D,G が一直線上にある時に CG と BF が解である。


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********** Apollonius_Delian_desc.dwg *********

詳細は アポロニウス(Apollonius)のデリアン問題 の章で説明。

9. ヘロン(Heron)

ヘロン(Heron of Alexandria , およそ 10 AD - 75 AD) の解はフィロンの解に非常に似ている。
違いは D を通る線分が EF = EG になるように選択されることである。
その時の CG と BF が解である。

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*********** Heron_Delian_desc.dwg ***********

詳細は ヘロン(Heron)のデリアン問題 の章で説明。

10. ディオクレス(Diocles)のシッソイド疾走線

ディオクレス(Diocles, およそ 240 BC - 180 BC) は シッソイド疾走線(Cissoid) を発明し、その曲線をデリアン問題の解に用いた。


*********** Diocles_Delian_desc.dwg **********

ここをクリックしてアニメーションを見る。

詳細は ディオクレス(Diocles)のデリアン問題 の章で説明。

11. パップス(Pappus)の反復近似

パップス(Pappus of Alexandria , およそ 290 AD - 350 AD) はこの本の中で、以下の方法を述べている。
名前を挙げずにある高名な数学者の考え出したものであると紹介している。
しかし 彼自身はこの方法に批判的である。
その主な理由は これが 反復法であり無限回くりかえせば 正解に近ずくことに気がつかなかったためである。
この例は 三回の反復の後の結果である。AD = 1.0, AB = BC = 2.0 から始めて
X'Z = 1.25909 (正解は(2)1/3=1.259921 )
Y'Z = 1.58643 (正解は(2)2/3=1.587401 )


*************************** approximation_Delian_desc.dwg **************************

ここをクリックしてアニメーションを見る。

詳細は Approximation_Delian の章で説明。

参考文献

  1. Heath,Thomas L. :"History of Greek Mathematics Vol. I From Thales to Euclid" Dover 1981

  2. Heath,Thomas L. :"A Manual of Greek Mathematics" Dover 1963 original 1931

  3. Heath,Thomas L. :"A History of Greek Mathematics Vol. II" Dover 1981 original in 1921

  4. Heath,Thomas L. :"The Works of Archimedes Dover" 2002 original in 1912

  5. Knorr,Wilber Richard :"The Ancient Tradition of Geometric Problems" Dover 1993

  6. Knorr,Wilber Richard :"The Textual Studies in Ancient and Medieval Geometry",Birkhauser, 1989

  7. 数学セミナー編集部 : "数学 100 の問題",日本評論社、1999.

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質問、問い合わせは 筆者 岩本 卓也 宛てにお願いします。

Last Updated Nov 22, 2006

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