ヒピアス(Hippias, 約460BC ~ 400BC)の三等分法を下図に示す。
角の三等分問題を解くために最初に考え出された曲線が
、
なんといきなり所謂、超越関数と呼ばれるものであったことは興味深い。 この発明が当時のギリシャ世界で如何に画期的
なものであったことは、発明者 ヒピアスは これにより一躍有名になり、各地を講演旅行してまわり、経済的にも裕福であった
とつたえられていることからも推測できる。
ただし 同時代の数学者(たとえば プラトン )からは その言行について いささか
冷ややかに批評されている。多少はやっかみもあろのであろう。
この曲線の名前 quadratrix は円積問題(circle quadrature)を解くための曲線(-trix) という意味である。
その理由は、この曲線を使って円周率を見つけることが出来るからである。
そのことに だれが最初に気が付いたかにつては 諸説がある。
ひとつは ヒピアス はすでに 知っていたという説、もうひとつ は彼の死後 メナケムス
の弟 デノストラトス(Dinostratus) 約390BC ~ 約320BC)
によるものであるという説の二つである。 しかし、
どちらが正しいかは別にして、この曲線はもともと角度の三等分、さらに一般的な N 等分に使うために発明されたものである。
三等分の仕方:
ステップ 1:円積曲線を描く。 曲線上の点A を指定し∠AOBを定義。
ステップ 2:点A からOB に平行な線を引き POと交差する点をC とする。
ステップ 3:線分CO 上でOD = CO/3 となる点D を求める。
ステップ 4:点D からOB に平行な線を引き 曲線との交点をE とする。
∠EOB は∠AOBを三等分した角である。
*********** quadratrix_tri_desc.dwg
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ここをクリックしてアニメーションを見る。 詳しくは 円積曲線 - ヒピアス(Hippias)の章で説明。
コンコイドを用いた角の三等分を下図に示す。
この曲線は初めコクロイド (Cochloid) と呼ばれ、後にコンコイド (Conchoid)
と呼ばれるようになった。
"貝殻の形をした曲線"という意味で ギリシャ語 の conch, cockle (貝殻)に接尾語 の -oid (--の形をした)の合成語である。
コンコイドは、ニコメデス
(Nicomedes, 約280 BC - 約210 BC)
がデリアン問題 (Delian Problem)を解くために発明した。
その後パップス Pappus of Alexandria (約290 -
約350) が角の三等分にも使用できることを示した。
三等分の仕方:
ステップ 1 : 直角座標軸O-XYを描き、OY上に点Aを定める。
図のように線分OB を引き、三等分する角を∠AOBとする。
ステップ 2 : 点O を中心に半径(a)の円を描く。
円と線分OBの交点をLとする。LからX軸に平行な線を引き、
Y軸との交点をDとする。
ステップ 3 : Oを基点にしたポールを想定し、線分DLと交わる点
からの長さが常に2aとなるような曲線NCM (黄色で示す)、
コンコイド(Conchoid)を描く。
ステップ 4 : 点L からY軸に平行な線を引き、コンコイドとの交点を
Cとする。線分OCは∠AOBを三等分する。
******** conchoid_trisection_desc.dwg
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ここをクリックしてアニメーションを見る。 詳しくはコンコイド - ニコメデス(Nicomedes)の章へ。
アルキメデス(Archimedes of Syracuse , 287 BC - 212 BC) は角の三等分に螺旋を用いた。
これをアルキメデスの螺旋(Archimedes' Spiral)という。アルキメデスの方法を下図に示す。
ここをクリックしてアニメーションを見る。 詳しくは 螺旋 - アルキメデス(Archimedes)の章へ。
パップス (Pappus of Alexandria , 280 - 350) は双曲線が角の三等分に使用できることを示した。パップスの方法を下図に示す。
∠F1OF2 の三等分は、弧 F1-F2
を三等分するのに等しい。
これは離心率2の双曲線で達成できる。
双曲線上の全ての点において、F1(焦点)からの距離が
Y軸 (準線)への法線距離の2倍であることを意味する。
また線対象であることから、交点B と交点C は
弧 F1-F2 を三等分する。
******** Pappus_hyperbola_tri_desc.dwg
********
ここをクリックしてアニメーションを見る。 詳しくは 双曲線 - パップス(Pappus)の章へ。
リマソン(Limaçon)は 1650年頃 エチエンヌ パスカル によって発明され、
ニュートン( Isaac Newton , 1643 - 1727)
によって角の三等分に使用された。パスカルの方法を下図に示す。
点Pは半径COの単位円に沿って移動。長さbは固定値とする。
線分CPの延長線上の点Aが PA = b となるように指定する。
点Pが単位円に沿って移動する時の点Aの軌跡が
リマソン(Limaçon)と呼ばれる曲線である。
三等分に使われるリマソンは b = 1 の場合である。
図の黄線は三等分に用いるパスカルのリマソン。
点Oを中心に単位円を描く。 b = 1 のリマソンを描く。
リマソン上の点Aを選択し、∠AOBを三等分する角とする。
線分CAを引く。 ∠CAOが三等分した角である。
******** limason_tri_desc.dwg ********
ここをクリックしてアニメーションを見る。 詳しくは 蝸牛形 - パスカル(Pascal)の章へ。
デカルト(René Descartes, 1596 - 1650)
は解析幾何学の創始者と呼ばれている。1637年に有名な論文"La Géométrie"を出版した。
この本の中で、彼は放物線を使って角の三等分ができることを示した。デカルトの方法を下図に示す。
1. 半径 = 2の円を描き、点Aを定める。 ∠AOBを三等分する角とする。 2. AからOBに垂線を下ろす。その長さを 2a とする。 これは三等分方程式の2a に相当する。 3. 放物線 y = x2 を描く(黄)。 また点C (a, 2) を中心に原点を通る円を描く(緑)。 4. 放物線との交点Pを求め、垂線をOBに下ろす。 この垂線とステップ1で描いたOを中心とする円 との交差点をTとする。 5. 線分OTは∠AOBを三等分する。
ここをクリックしてアニメーションを見る。 詳しくは放物線 - デカルト(René Descartes)の章へ。
放物線の方法は三次放物線に簡単に拡張できる。この方法を下図に示す。
2.
外円上の点Aを指定し∠AOBを三等分する角とする。
OAが内円と交差する点をA'とする。点A'からOBに垂線を下ろし、
その交点をGとする。
注)長さOGは三等分方程式のa である。
3. OH = OG となるようにY軸上の点H を求める。
点H を通り線分 EF に平行な線を引く。
4.
この直線は三次放物線と点Kで交わる。この点から
OBに垂直な線を下ろすと、点Mで外円と交差する。
線分MOが∠AOBの三等分線である。
******** cubic_parabola_tri_desc.dwg
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ここをクリックしてアニメーションを見る。 詳しくは三次放物線の章へ。
チェバ (Tomasso Ceva, 1648 - 1737)は はチェバの定理で知られている ジョヴァンニ・チェバ ( Giovanni
Ceva
, 1647 - 1734)
の弟である。アルキメデスの挿入法を、Cycloidum anomalarum と名付けた特殊曲線(チェバのサイクロイド)を用いて
与えられた任意角の三等分に応用した。
チェバの方法を下図に示す。
2. 三等分する角 ∠AOBを定義
3. 線分OA上の単位長OEを求める。点Eを通り線分OBに平行な線を引く。
4.
この線分によりチェバのサイクロイドを6箇所切断。P、S、T は
それぞれ角 3θ 、360° + 3θ 、 720° + 3θ で三等分角。
残りの3点 P'、 S'、T' は 3θ を 180 - 3θ で置き換えた場合の解である。
******** cycloid_of_Ceva_tri_desc.dwg
********
ここをクリックしてアニメーションを見る。 詳しくはCycloidum Anomalarum - チェバの章へ。
マクローリン(Colin Maclaurin
, 1698-1746) はマクローリン級数で知られているスコットランドの数学者である。
わずか 11歳で グラスゴー大学に入学を許され、その一年後には 独力で ユークリッドの "幾何学原論"
全13巻 の内 6巻を完全にマスターしたと言われている。 そこで 数学の教授をしていた "シムソン線"
で有名な ロバート シムソン(Robert Simson)と出会い ギリシャ古典幾何学に興味を持つようになった。
数学の物理学への応用にも優れ 二度にわたり フランス科学アカデミー から賞を獲得している。
一回目は "物体の衝撃について" ,二度目は "潮汐について" で 二回目の賞は 当時を代表する 二大数学者
オイラー(Euler) 、 ダニエル ベルヌーイ(Daniel Bernoulli) との連名受賞であることからも
かれが 当時の一流の数学者であったことがわかる。
マクローリンの方法を下図に示す。
2. EF上の点Qを指定する。
線分CQの延長線と半円の交点をPとする。
3. CR = CP - CQを満足する点Rを求める。
4. 点Qが線分EFに沿って移動する際に描かれるRの軌跡を
マクローリンの三等分曲線という。
注) QがEFに沿って移動することから、この方法を
"imaginary" リンク CQ-QO-OR とも言う. リンクの長さが変数で
実際には存在しないので "imaginary" (想像上の) と呼ばれる。
******** Maclaurin_tri_desc.dwg ********
質問、問い合わせは 筆者 岩本 卓也宛てにお願いします。
Last Updated Nov 22, 2006
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